韓国法人の労働時間管理 — 週52時間制と出退勤記録の基本
韓国の勤労基準法では、1週40時間・1日8時間の法定労働時間に、当事者間の合意による延長労働を週12時間まで加えた「週52時間」が上限の基本になります。日本の36協定のように月・年単位で上限を管理する考え方とは異なり、韓国では「週単位」での管理が中心です。2026年4月には包括賃金の乱用を防ぐ雇用労働部の指針も施行され、実際の出退勤時刻を記録しておく重要性が高まっています。
週52時間制の基本(勤労基準法第50条・第53条)
韓国の法定労働時間は、休憩時間を除いて1週40時間、1日8時間です(第50条第1項・第2項)。作業のために使用者の指揮・監督下にある待機時間も労働時間とみなされます(同条第3項)。
この法定労働時間は、当事者間で合意すれば1週12時間を限度に延長できます(第53条第1項)。40時間+12時間で、いわゆる「週52時間制」になります。なお、常時30人未満の事業場に認められていた週8時間の追加延長(第53条第3項)は、2022年12月31日までの時限規定とされていました。
あわせて押さえておきたい規定は次のとおりです。
- 休憩(第54条):労働時間4時間につき30分以上、8時間につき1時間以上を、労働時間の途中に与えます。
- 加算賃金(第56条):延長労働は通常賃金の50%以上、夜間労働(午後10時〜翌午前6時)は50%以上を加算します。休日労働は8時間以内が50%以上、8時間を超える部分が100%以上です。
- 休日(第55条):1週平均1回以上の有給休日(週休日)を与えます。官公署の公休日を有給休日とする第55条第2項は、常時5人以上30人未満の事業場にも2022年1月1日から適用されています。
常時5人未満の事業場は一部が適用されない
勤労基準法は常時5人以上の労働者を使用する事業場に適用され、4人以下の事業場には大統領令で定める一部の規定だけが適用されます(第11条)。雇用労働部の相談窓口(1350)の回答では、4人以下の事業場には法定労働時間(第50条)、延長労働の制限(第53条)、延長・夜間・休日の加算賃金(第56条)、年次休暇(第60条)などが適用されないと案内されています。一方、休憩(第54条)や週休日(第55条第1項)は適用されます。
設立直後の小規模な韓国法人では、この区分が実務に大きく影響します。人数は「常時使用する労働者数」で判断されるため、採用の予定に合わせて早めに確認しておくと安心です。
日本の36協定との違い
日本では、労働基準法上の法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働かせるには36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要で、時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)、月45時間を超えられるのは年6か月まで、という枠があります。
| 項目 | 韓国(勤労基準法) | 日本(労働基準法) |
|---|---|---|
| 法定労働時間 | 1日8時間・1週40時間 | 1日8時間・1週40時間 |
| 延長の要件 | 当事者間の合意 | 36協定の締結・届出 |
| 上限の単位 | 1週12時間まで(週単位) | 原則 月45時間・年360時間(月・年単位) |
| 時間外の割増 | 50%以上 | 25%以上(月60時間超は50%以上) |
| 深夜・夜間 | 午後10時〜午前6時、50%以上 | 午後10時〜午前5時、25%以上 |
| 休日労働 | 8時間以内50%以上、超過分100%以上 | 法定休日 35%以上 |
| 休憩 | 4時間で30分以上、8時間で1時間以上 | 6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上 |
日本本社の感覚で「月45時間以内なら問題ない」と考えると、韓国では特定の週に12時間を超えた時点で上限を超えてしまうことがあります。たとえば1日あたりの延長が3時間程度でも、それが平日5日続けば週15時間となり、週12時間の上限を超えます。月の合計が少なく見えても、繁忙期の1週間だけで超えてしまうケースがあるため、月の合計ではなく週ごとの延長時間を確認する仕組みが必要です。
2026年の包括賃金に関する指針
雇用労働部は「공짜노동 근절을 위한 포괄임금 오남용 방지 지도 지침」(ただ働き根絶のための包括賃金の乱用防止に関する指導指針)を2026年4月9日から施行しました。報道資料や報道によれば、ポイントは次のとおりです。
- 延長・夜間・休日労働を含む実労働時間に基づいて法定手当を計算すること
- あらかじめ定めた定額の手当が、実労働時間で計算した法定手当を下回る場合は、その差額を支払う必要があること
- 賃金台帳・賃金明細書に、基本給と各種手当を区分して記載すること
賃金明細書に賃金の構成項目と計算方法を記載する義務は、もともと勤労基準法第48条第2項に定められています。いわゆる「固定残業代」を採用している韓国法人でも、実際に何時間働いたかを記録していなければ差額の有無を確認できません。
出退勤記録で押さえたい実務ポイント
- 実際の始業・終業時刻を毎日記録する:所定時刻ではなく実際の時刻を残します。
- 延長・夜間・休日を区分して集計する:加算率が異なるため、給与計算の前に区分しておきます。
- 週単位で延長時間を確認する:週12時間の上限に近づいた人を早めに把握します。
- 修正の履歴を残す:打刻漏れや訂正は、誰がいつ直したか分かる形にしておきます。
- 書類の保存:勤労基準法第42条は、労働者名簿と大統領令で定める労働契約に関する重要な書類を3年間保存するよう定めています。
本社への月次報告で見ておきたい項目
- 従業員ごとの週別の延長時間と、週12時間に近い週があったか
- 夜間・休日労働の時間(加算率が異なるため延長とは分けて確認)
- 打刻漏れや事後修正の件数と、その理由
- 定額の手当を支給している場合、実労働時間で計算した法定手当との差額の有無
本記事は一般的な説明であり、個別の判断は韓国の労務士(公認労務士)等の専門家にご確認ください。
IROON でできること
IROON(イルーン)は、スマートフォンのブラウザで使う GPS 出退勤記録アプリ(PWA)です。アプリストアからのインストールは不要で、位置は出勤・退勤ボタンを押した瞬間に一度だけ記録します。残業・休日・深夜の区分、残業・休暇申請と承認、月別出勤簿の印刷・PDF出力、給与用CSVに対応し、記録の変更履歴は修正・削除できない形で残ります。従業員アプリと管理者画面はどちらも日本語・韓国語に対応しています。実労働時間の記録を残す手段のひとつとして、30日間の無料体験(カード登録不要)でお試しいただけます。
参考資料
- 韓国法制研究院(KLRI)「Labor Standards Act」英訳(Act No. 21373, 2026年2月19日改正版)(2026年10月8日閲覧)
- 国家法令情報センター「근로기준법」(韓国語原文)
- 雇用労働部 報道資料「「공짜노동 근절을 위한 포괄임금 오남용 방지 지도 지침」 4월 9일부터 시행」(2026年4月)
- 雇用労働部 顧客相談センター(1350)相談回答:5人未満事業場への適用規定(2026年10月8日閲覧)
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」(2026年10月8日閲覧)
- 厚生労働省「労働時間・休日」(2026年10月8日閲覧)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件:時間外・休日労働と割増賃金」(2026年10月8日閲覧)